自社最適なモダナイゼーションアプローチを判断する3要素とは:データ整理から新システム移行まで解説
第3回:モダナイゼーション実践編 - SoR移行フェーズ

連載「2025年の崖の“先”を見据えたモダナイゼーションアプローチ」では、モダナイゼーションがうまく進められない情シスの方々に向け、具体的なモダナイゼーションアプローチ方法を紹介しています。連載の最後となる本稿では、移行の下準備となるデータの分類から実際のシステム移行時における具体的なステップまで詳しく解説していきます。
レガシーシステム移行時に押さえるべき3つのフェーズ
前回の連載では、「モダナイゼーション実践編」として、業務の整理と分離の方法から顧客接点基盤の構築までを解説しました。連載第3回となる本稿では、モダナイゼーション実践編の続編として、レガシーシステムからクラウドへ移行する際に行うデータの分類からシステム構成を決定するアプローチ、システム・データの移行までを詳しく説明していきます。
▼第2回の連載記事
今回説明する移行フェーズは、いわずもがなモダナイゼーションにおける中核部分となり、リスクも難易度も高いため、成功させるためには各ステップでの的確な判断が重要です。本稿では、レガシーシステムの移行を「データの分類とシステム構成定義」「レガシーシステムの移行」「データの移行」の3ステップに分けて、以下の目次に沿って押さえておくべきポイントを解説します。
1. データの分類化とシステム構成定義
1-1. あるべきデータモデルの整理/アセスメント/リスク分析
1-2. 移行方針の決定
2. レガシーシステムの移行
2-1. 改修ケースの移行アプローチ
2-2. 業務影響と不要なバッチ処理の見直し
3. データの移行
3-1. 基幹データの安全な一括移管方法
3-2. 並行稼働アプローチを用いた本番稼働の切り替え

1. データの分類とシステム構成定義
SoR領域では、企業の重要なデータの記録・管理だけでなく、システム全体のデータの一貫性を担保しつつ安全に保管する“データの保全”が重要となります。そのため、この領域のモダナイゼーションを考えていく上では、データクオリティ(品質)、データマネジメント(管理)を念頭にデータのアセスメントを行い、データ中心のアプローチで移行方法を決めることが大切です。
1-1. あるべきデータモデルの整理/アセスメント/リスク分析
まずはデータ構造のアセスメントとリスク分析を行っていきます。アセスメントを行うにあたっては、業務で本来もつべきデータモデルと現状のデータモデルを突き合わせ、現状のデータモデルの過不足を確認します。第2回の連載記事で詳しく解説したカプセル化の工程で、もつべきデータは既に洗い出されている状態なので、現状用いているレガシーシステムのデータ整理から着手していきます。このとき、レガシーシステム上のデータだけでなく、ユーザーが業務の中で作成した部門個別で管理しているデータ(システム含む)も対象にすることを忘れないでおきましょう。
データの整理が完了したら、次に行うのはデータアセスメント。このフェーズではデータクオリティとデータマネジメントの視点で評価を行います。データクオリティとデータガバナンスではそれぞれ以下のポイントについて確認し評価していきます。
▼ データクオリティの評価ポイント
- 一貫性:関連するデータ間で矛盾や食い違いがないこと
- 完全性:すべてのデータがそろっていて欠損や不足がないこと(未入力など)
- 正確性:データに誤りがなく、業務の実態と合っていること
- 適時性:データが業務とのタイムラグがなく期待通り作成されていること
- 一意性:注文や人など、任意のエンティティに重複がなく一意にアクセスができること
▼ データマネジメントの評価ポイント
- 設計:データ構造の表現と方法が定義されていること
- 仕組み:DB環境の構成や場所、維持するためのルールが定義されていること
- 利用:利用者が特定されているか、また管理する仕組みがあること
- 体制:運用するための組織が確立されていること
データアセスメントが完了したら、評価した結果をもとに顕在的リスクと潜在的リスクの分析を行いましょう。顕在的リスクは、アセスメントの結果に対してそれぞれの項目に重みづけをして評点を付けていきます。現在のシステムにどの程度リスクが存在するか採点し、分析する手法です。
一方、潜在的リスクの分析にあたっては、DX計画をもとに目指すべき姿のユースケースを整理し、必要なデータが正しく取得できるか、現状または将来的にデータに対してリスクがあるか確認していきます。

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林田 宏介(ハヤシダ コウスケ)
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のシニアスペシャリストリード。システム開発会社、外資系総合コンサルティングフォーム、外資系ベンダー2社を経て現職。メインフレームからIoTの領域で、アプリケーション開発からR&Dでのプロダクト開発、アーキテクトまで幅広く手掛ける。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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