前回は仮想環境構築におけるライセンスの基本的な考え方をご説明しました。導入コストをよりイメージしやすくするために、実際に仮想環境を新規構築することを想定したケーススタディ形式で、ライセンス費用を算出してみましょう。
ケース1: 小規模な仮想環境の構築
A社では業務アプリケーション検証のためのテスト環境を整備することになりました。環境構築のために2台のサーバーを調達しましたが、より多くのシステムを稼働させて効率的に検証したいと考えているため、サーバー仮想化技術の導入を決定しました。
2台あるサーバーはいずれも1CPUソケット(4コア)を搭載しており、これにサーバー仮想化製品を導入します。それぞれのサーバー上で最大4つの仮想マシン(Windows Server)を稼働させる見込みで、OSライセンスも新規購入します。
また、統合管理ツールも導入したいと考えていますが、今回は専用の物理サーバーを準備することが難しいため、仮想マシンの一つとして導入する予定です。なお検証の効率性を高めるために仮想マシンの動的移行機能(Live MigrationやVMotion)を活用したいと考えており、これらの実行が可能なエディションが必要です。
このケースで必要なライセンス費用をまとめると、表1のようになります。
Hyper-V製品を利用した場合のコスト
まずはHyper-Vにおける内訳を確認してみましょう。
前回記事でご紹介したとおり、Hyper-V環境ではホストOS(ハイパーバイザー)用ライセンスとゲストOSライセンスをひとつのWindows Serverライセンスで共有できます。そのため今回のようにゲストOS用ライセンスを新規購入するケースでは、ハイパーバイザー用ライセンスは実質無償と考えることができます。
次にゲストOSです。今回は各サーバー上で最大4台のWindows Serverを稼働させる予定ですから、下表のとおりEnterpriseエディションが最も安価な選択肢となります。
統合管理ツールであるSCVMMのライセンスは、管理対象ホストの台数でカウントするため、今回は2ライセンス必要です。なお本ケースでは小規模向けパッケージであるWorkgroup Editionも利用可能ですが、Workgroup Editionは価格が公開されていないため、通常版のSCVMMを前提に費用を算出しています。
これらを合計すると、1,172,600円 になります。
VMware製品を利用した場合のコスト
VMware製品を利用するケースの内訳も確認しましょう。
VMware ESXはCPUソケット・ライセンスを採用しているため、ESXを導入するサーバーのCPU数から算出します。今回のケースでは1CPUを持つサーバー2台ですので、合計2ライセンスとなります。コア数はライセンスに影響を与えません。エディションは、今回の要件であるVMotionが使える中で最も安価なAdvancedエディションを選択しています。
ゲストOSについてはHyper-Vと同一のロジックです。今回のようにサーバー毎に4台の仮想マシンを稼働させる場合は、Windows ServerのEnterpriseエディションを購入するケースが最も安価です。
また統合管理ツールとなるVMware vCenter Serverを1台導入しますので、必要なライセンス数も1です。なお今回のケースは管理対象ホストが3台以下なので、安価な小規模環境向けパッケージ「VMware vCenter Server for Essentials」を選択できます。
これらを合計すると、VMware環境の場合は1,949,700円となります。
近年のVMware社は、1CPUソケット・ライセンスの提供や小規模環境向けパッケージであるEssentialsの新設など中小規模環境への訴求力を高めており、従来に比べて小さな環境でも検討しやすくなっています。
とはいえ今回のケースでは、Hyper-Vを利用したほうがおよそ40%(78万円)ほど安価であるという結果になりました。
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前島 鷹賢(マエジマ タカマサ)
Microsoft MVP for Virtualization - Virtual Machine日本アイ・ビー・エム(株)に勤務。MicrosoftやVMware製品を中心としたx86インフラ環境の設計・構築に従事。特にWindowsサーバー/クライアント環境のシステム管理・監視、セキュリティ、サーバー仮想化などの分野...
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